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鼻は細いほど美しい? PART3~鼻骨骨切りの必要性
鼻骨骨切りの必要性
鼻のバランスと言うと高さが問題となる事が多いのですが、正面から見た鼻の全体像のバランスに注目した場合は、このサイドラインの形がとても大切になります。
ちなみにサイドラインという言葉は全くのオリジナルで、医学的な表現ではありません。
あえて医学的な表現をするのであれば、side line というより lateral line というほうが正しい気がしますが、カタカナで「ラテラルライン」といってもピンとこないので勝手に「サイドライン」と言っています(ちなみに英語辞書でlateral lineを引いたら 魚の側線と書いてありました。)。
このサイドラインを4部位に分けたのが下のイラストです(これもオリジナルです)。
この四つの中で、一番下の鼻翼部は字のごとく鼻翼の皮膚の形状で形が決まります。ですからこの形を変えようとすると、「鼻翼縮小」と呼ばれる鼻翼の一部を切除する手術が必要になります。
(この鼻翼を大きくしたいという方はほとんどいらっしゃらないと思うので、一般的には「形を変える=小さくする」と考えて良いと思います。)
手術法は様々ですが、鼻翼という軟部組織の手術ですので技術的にはそれほど大変ではありません(意外と奥の深い手術ですが)。
でも、この鼻翼以外のサイドラインの形状は骨で出来ているため、ここを小さくしようとするとどうしても骨を切る手術、いわゆる「鼻骨骨切り」が必要になります。
この事を説明するために、久々にサカモト君に登場していただきましょう。
頭蓋骨を正面から見ると、鼻があるはずの部分にはぽっかり穴が開いています。
よく見ると、上(鼻根)と横の方にだけかろうじて骨が存在します。このぽっかり空いた穴には実際には軟骨という軟らかい骨が存在し、鼻を形作っています。
ですから、多くの鼻の手術はこの軟骨の形を変えたり足したり削ったりという方法で行われています。
でもサイドラインの形を変えるためには、鼻翼以外はこのかろうじて存在する鼻の骨の形状を変える必要があります。つまり、「鼻骨骨切り」が必要になります。
拡大した写真で見ると、青い点線で書いた所がサイドラインになります。
この骨でできている眉間部、鼻根部、中間部の中で、眉間部についてはどちらかと言えば低い眉間を高くした方が良い方の方が圧倒的に多いので、眉間を作る手術「眉間形成」を行う事はあっても、大きすぎる眉間を小さくするためにこの部分の骨切りをすることはまずありません。
鼻根も、元々の鼻根が太すぎるという方は少ないので、ここを小さくするだけの目的で骨切りすることもほとんどありません。
実際に「鼻骨骨切り」が必要となるのは、「中間部」です。鼻根が太いという方も、大抵鼻根だけでなく中間部まで太い事がほとんどです。この中間部の幅が広いと、特に正面から見た鼻がすっきり見えません。
例えば、中間部から下全体、つまり中間部も鼻翼も大きい方が鼻翼縮小をして鼻翼だけ小さくしてもシャープな鼻には見えず、逆にもったりとした重たい鼻に見えてしまいます。
こういった方の鼻をすっきりさせようとすると、やはり「鼻骨骨切り」で中間部の幅を狭くする必要があります。
もちろん、中間部だけでなく鼻根部も太いのであれば合わせて一緒に狭くすると全体的にすっきりとした鼻に見えます。
「鼻翼縮小で小鼻を小さくしたら不自然な鼻になった。」
「隆鼻術で鼻筋を通しても鼻がすっきり見えない。」
「鼻尖縮小をしたのにまだ鼻が大きく見える」
こんな方はもしかしたら中間部が太い事が原因かもしれません。
一般的な広鼻に対する鼻骨骨切りについて
鼻骨骨切りという手術は、これまでお話ししてきた鼻の幅の広い方(広鼻)だけでなく、ワシ鼻や斜鼻(曲がった鼻)の治療にも行われます。
一般にワシ鼻の方は広鼻も伴う事が多いので、この両方に対応する目的で骨切りを行う事は多いのですが、今回は一般的な広鼻に対する鼻骨骨切りについてお話します。
骨切りのラインは正面から見るとこんな感じになります(赤の点線)。
エラや顎の骨切りでは、電動ののこぎりのような器具で骨を切ることが多いのですが、鼻の骨は薄くデリケートで、おまけにすぐ裏にある鼻粘膜を傷つけると厄介な出血が起こりますので、細く小さなノミで少しずつ慎重に切っていきます。
大きく動かす必要のない部分は、骨に切れ目を入れるだけです。
こうして骨を動きやすくした上で、指もしくは器具を使って内側に動かします(水色矢印)。
術後は約1週間ギプス固定を行います。骨を切っているからと言って他の鼻の手術と比べ特別大きく腫れるという事は無く、1~2週間でほぼ落ち着いた状態になります。
先ほどお話したノミで骨を切っていく作業を、以前は鼻腔内からすべて行っていましたが、最近は一部を鼻の表側から2ミリほどの小さな切開を加えることで行っています。
場所は3か所で、鼻根と鼻の両サイドになります。イラストで赤く印した位置です。もちろん、これ以外に鼻腔内も一部切開します。
外からアプローチする理由としては、鼻腔内からだけの操作で骨を切っていくと、特に鼻根近くの切離ラインが狙ったラインになりにい事と、この表側の小さな傷はほとんど目立たなくなるため良好な結果を優先するとこちらの方が適した術式と考えられるからです。
ちなみに、鼻骨の骨切りラインを斜めから見るとこんな感じです(赤点線)。
この中で、一番大きな切離線である両サイドの縦の骨切りを行っている骨は、実は鼻骨ではありません。
この事を説明するために、この部分の骨を色分けしてみるとこうなります。
もうお分かりですね。鼻骨自体は非常に小さな骨で、鼻根の一部を形成しているに過ぎません。
この縦に大きく切っている骨は、鼻骨ではなく上顎骨という上あごを作っている骨の一部という事になります(正確には上顎骨前頭突起という部分です。)。
ということは、前回までお話ししてきた鼻のサイドラインも鼻骨が形成したラインというより上顎骨が作っているラインという事になります。
そうなると、「鼻骨骨切り」という名称も微妙になってきますね。